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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/09/09 21:00

【セントライト記念2024 血統展望】キタサンブラックから学ぶ「レース攻略・虎の巻」とは!?

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≪今週の動画その1・愛チャンピオンS≫
▼シンエンペラー&海外馬をガッチリ分析!


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

中山の芝は例年に輪をかけて時計が速いですね。紫苑Sではクリスマスパレードに◎を打っていたとはいえ、あそこまで速い時計に対応できるとは思っていなかったのが正直なところ。好タイムでの勝利は立派ですが、秋華賞に向けて反動がないといいですね。

また「秋の中山芝の加速ラップはたいてい眉唾」が持論なのですが、先週の中山芝のレースはほとんどが加速ラップだったような。次走以降ホイホイされると危ないので心に留めておきましょう。自戒を込めて……。

とはいえジョッキー各位が高速馬場と前を意識すると、京成杯AHのような差し決着になるパターンも。このあたりの加減にも引き続き注意を払いたいところです。

さて、この記事では3日間開催のトリを飾る重賞・セントライト記念(GII、中山芝2200m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

過去のレース傾向
中山開催近10回分のセントライト記念では父サンデーサイレンス系が【7-7-6-50】で複勝率28.6%。出走頭数が多いのもあるが、10回のうち7回で勝ち馬を出しているうえ、近4年連続でワンツー決着を決めているあたりはさすがの成績。

そのなかで注目したいのがリファールのクロスを抱える馬。

中山開催近10回のセントライト記念において、リファールのクロスを抱える父サンデーサイレンス系は【3-2-2-6】で、勝率23.1%、複勝率53.8%。回収率も単勝182%、複勝110%なのでベタ買いOKの数字となっている。

キタサンブラックは自身もこのレースを制し、なおかつ近2年連続で産駒が連対中だが、その鍵もリファールのクロスにあるのではなかろうかと。キタサンブラックはリファール4×4のクロスを抱えているので。

リファールはモガミやマニラに代表されるような渋太さ、スタミナを伝える側面がある。そのため、急坂2回付きの芝2200mというタフなセントライト記念の条件で輝くタイプが出やすいのだろう。

現在、サンデーサイレンス系の主流たるディープインパクト系、ハーツクライ系のいずれもがリファールの血を引く。芝向き王道の良血からリファールの粘り強さを抽出するのがポイントと言えそうだ。

≪今週の動画その2・セントライト記念≫
▼父サンデー系はリファールクロスを狙え!


各馬の個別検討
コスモキュランダ
父は皐月賞と大阪杯を制したアルアイン、母サザンスピードはオーストラリアで2400mのGIコーフィールドCを制した名牝。

この馬については「リトルアルアイン」というイメージで、アルアインの高速内回り中距離適性を綺麗に受け継いだという認識。コース適性に順番をつけるとすれば中山内回り2000m>中山外回り2200m>東京2400m。直線の長い日本ダービーよりは、今回の方が条件好転と見る。

父のアルアインは皐月賞勝ち→ダービー5着→セントライト記念2着という成績。皐月賞2着→ダービー6着と父の着順からひとつずつ落としているコスモキュランダはここで3着なのでは? などと思ったり。

距離は1ハロン長いのかもしれないが、弥生賞・皐月賞のパフォーマンスからも力があるのは明らか。道中で動ける機動力も魅力で、ある程度評価しておきたい存在となろう。

アーバンシック
父はスワーヴリチャード、母エッジースタイルはJRAの芝中距離で3勝。3代母はウインドインハーヘアなので、ディープインパクトやブラックタイド、レイデオロなどが近親にいる血統だ。

前走、4番人気に支持された日本ダービーでは、前半スローの流れを後方追走の形になってしまい万事休す。後半がガツンと速くなるラップになってしまったため、前半のロスが埋めきれずそのまま後方で雪崩れ込みという形になった。

確かに東京向きの馬だとは思うものの、それでも中山外回りであれば十分こなせるだけの適性はありそう。少なくとも京成杯よりはレースしやすいはず。

注目ポイントとしたリファールクロスを抱える父サンデー系なので、最上位評価とすることも考えたが、脚質的にリファールクロスっぽさを感じないというのはこれいかに。リファールクロスの王道はキタサンブラックのような前受けしての粘り強さにあると思っているのだが、アーバンシックの脚質からはそれをあまり感じない。というか真反対だし。

配合面では評価しつつ脚質面でやや割り引き。コスモキュランダと同じく2番手、3番手あたりの評価を考えている。

スティンガーグラス
父はキズナ、母ライフフォーセールはアルゼンチンで2200mのGIブエノスアイレス大賞と2000mのGIラプラタオークスを制したGI2勝馬。半姉には阪神JFなどを制したダノンファンタジーがいる。

ライフフォーセールの仔は、牝馬だとダノンファンタジーやロクセラーナ、パタゴニアのような運動神経の良いマイラーが出る一方で、牡馬だとアドマイヤベネラやセレブレイドガイズのような切れないスタミナ型に出やすい印象。中距離で活躍した母の持久力だけ受け継ぎました、みたいなタイプが少なくない。

スティンガーグラスもそのイメージで、ここまで敗れた2戦はいずれもスローの決め脚比べになったのが敗因だろう。

スプリングS(6着)のレース上がり600mは33秒7、東京の1勝クラス(2着)は33秒9といずれも33秒台の決着だった。ライフフォーセール牡馬に33秒台の勝負はちょっと苦しいと言わざるを得ない。反対に勝った2戦のレース上がり600mはそれぞれ35秒9と35秒6。いずれも35秒台後半のレンジに収まっていた。上がりがかかれば2戦2勝なわけで。

今回は距離こそ前走と比較して200m短くなるが、上がりのかかりやすい中山の2200mは好材料。持ち前のスタミナを活かしたレースに期待ができるはず。

ディープ系種牡馬に南米牝系、しかも母父がノットフォーセールというのは2020年の当レース2着馬サトノフラッグと同じパターン。しかも、サトノフラッグとスティンガーグラスの間にはリファールクロスを抱える共通点も。

サトノフラッグも上がりのかかる消耗戦に強いタイプだったが、現状スティンガーグラスに抱いているのも同じイメージ。サトノフラッグ的に4角強気に運んで押し切る競馬が理想形だ。

それを思うと、前走でキチンと位置を取って突き抜ける競馬ができたのはプラス材料。予行演習はバッチリだ。ヘンに構えてもリファールクロスの粘っこさは引き出せないので、テン乗りとはいえ鞍上の"レジェンド"にはあのイメージで乗っていただきたいところ。

今回、アーバンシックとスティンガーグラスしかいない「リファールクロス持ちの父サンデー系」だが、同じリファールのクロスならより前で運べる馬の方を買いたい。アーバンシックよりもこちらというのが現状の感触だ。

エコロヴァルツ
ドナテッロとハイペリオンをベースとしたバークレア≒ハイハット≒オリオールの組み合わせを抱えるのが特徴。欧州的なスタミナや成長力を伝えるパターンで、ここからさらに良くなるだろうし2200mの距離も問題ないと見る。

その一方で、オリオール的な要素を増幅しているため、気性の難しさというのは如何ともしがたいところ。

好走したレースを振り返ると、新馬戦は外の3番手追走から早め抜け出し、コスモス賞はハナを切っての逃げ切り、朝日杯はドンケツからの大外一気と、いずれも揉まれない形での競馬だった。反対に馬群のインで脚を溜めた共同通信杯では大して伸びずの5着という結果に終わったわけで。

それを思うと、今回も乗り方は結構難しくなりそう。ダービーのような逃げは気性を考えると悪くないが、それで8着に敗れた点を鞍上の岩田パパがどう判断しているのか。

「意外と悪くない競馬だった」と考えていて、またここでもハナを切るようなら十分粘り込みもあるはずだが、「イマイチだったから馬群で脚を溜めて直線うまく捌いてみよう」なんて発想になってしまうと、オリオール的な直線で逆噴射の絵も描ける。

そのあたりについてなかなか判断しにくいところがあるため、「力を認めつつの△扱いが妥当なのでは?」と考える次第だ。

アスクカムオンモア
父はアメリカで芝GI5勝のブリックスアンドモルタル、母マキシマムドパリは愛知杯とマーメイドSの重賞2勝の実績があり、ミッキークイーンが勝った秋華賞でも3着に好走した。

ここまで5戦して馬券を外したのは出遅れが響いたデビュー戦のみ。その後はプリンシパルSを含め、先行して安定した取り口を見せている。そのレースぶりからは母の面影も感じさせる。いい馬だったのよ、マキシマムドパリ。

ただこの馬で気になるのはハイエストオナー(母母母父)の血を引く点。ハイエストオナーは平坦>急坂の傾向があり、特にOPクラスの牡馬でそれが顕著なのだ。

芝OPクラスにおけるハイエストオナー内包牡馬の開催場別通算成績(主要4場)
東京【6-2-10-34】
 勝率11.5% 連対率15.4% 複勝率34.6%
中山【1-2-1-29】
 勝率3.0% 連対率9.1% 複勝率12.1%
京都【2-2-2-16】
 勝率9.1% 連対率18.2% 複勝率27.3%
阪神【1-2-1-20】
 勝率4.2% 連対率12.5% 複勝率16.7%


このように、急坂のある中山と阪神で成績が悪く、反対に東京・京都で成績が良好。

また同じ京都芝であっても、馬券になったのは外回りのみ、阪神でも複勝率は外回りの方が高い。基本的には直線が長くて、直線に急坂のないコースで狙うというのがハイエストオナー内包牡馬との付き合い方。

該当する活躍馬を思い返してみると、NHKマイルCを制したシュネルマイスター、東京芝2500mに滅法強かったルルーシュ、青葉賞と日経新春杯を制したレーヴミストラル。この並びだけでなんとなくそのイメージは掴めるだろう。

それを考えると、中山の芝2200mというのはハイエストオナー的には歓迎できない。溜めに溜めて切れだけ活かして3着狙いの競馬ならなんとか誤魔化せるかもしれないが、ここまで正攻法の競馬をしてきた馬がいきなり脚質転換できるかと言われるとなんとも言えず。

戦歴が綺麗な点、前走1勝クラスとは言え勝利を収めている点、リステッドのプリンシパルSで3着がある点から穴人気に支持されるかもしれないが、個人的には「中山の芝重賞だとどうなの?」と。「この次の京都で買った方が良いのでは……?」というのが偽らざる印象だ。

ヤマニンアドホック
父はノヴェリスト、母ヤマニンアドーレはJRA未勝利に終わったものの、祖母のヤマニンアラバスタは新潟記念と府中牝馬Sの重賞2勝、ダイワエルシエーロの勝ったオークスでも3着に好走した。

ヤマニンアラバスタの仔と孫のコース別成績を見てみると中山での成績がピカイチで、勝利数は他を大きく引き離している。ヤマニンアドホックの中山替わりはプラスと見る。

そのうえノヴェリストの産駒は切れる脚がないので、芝2200&2500mの中途半端な非根幹距離が大の得意。代表産駒のブレークアップは芝2500mのアルゼンチン共和国杯を制し、ラストドラフトも古馬になってからはAJCCとアル共だけ妙にやる気を出すタイプの馬に完成した。

それを考えると、ヤマニンアドホックの中山芝2200mチャレンジはかなり面白そう。位置を取れるうえ上がりの時計がかかってほしいタイプなので、この舞台でさらなる前進が見込める。

まとめ
注目ポイント「リファールクロス持ちの父サンデー系」に合致する2頭からは人気のアーバンシックではなく、あえてスティンガーグラスを上に取りたい。同じリファールクロスならより位置を取れる方を狙う発想で。

中穴以下からはヤマニンアドホックの中山芝2200m替わりが楽しみ。相手は強くなるがこの舞台なら前走以上の着順も十分にあり得る。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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