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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/10/14 21:00

【菊花賞 2024 血統展望】人気馬に不安要素も!? 淀の坂の申し子を狙う

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≪今週の動画・菊花賞≫
▼狙え「淀の下りの申し子」!


皆さま、お元気ですか。血統サイエンティストのドクトル井上です。

この記事では、週末の重賞・菊花賞(GI、京都芝3000m)の展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

過去のレース傾向
JRA唯一の3000mのGIとあって独特の適性が求められる菊花賞。リアルシャダイ、サッカーボーイ、ダンスインザダークなど、菊花賞巧者の血筋が存在するのはその影響だろう。その一方で、このレースを不得手とする血があるのも当然の話だ。

菊花賞を苦手とする血のひとつがデインヒル。過去、京都開催の菊花賞におけるデインヒル内包馬の成績は【1-0-2-21】で、複勝率12.5%に留まる。スタミナ血統ヒズマジェスティこそ抱えるものの、デインヒルには快速血統ダンジグや北米屈指のパワーを誇るバックパサーなどが入るため、3000mへの適性を強化するのとは別の方向を向いてしまうということだろう。

確かに昨年の菊花賞はデインヒル内包馬のドゥレッツァが勝ち、同じくデインヒルを内包するソールオリエンスが3着に好走したが、レベルに疑問が付くレースであり、例年の傾向と異なるイレギュラーな菊花賞だったと考えたい。菊花賞の上位馬が翌年(=今年)の春天で揃って返り討ちにあったあたり、いわゆる「菊らしさ」とは遠い質のレースだったと見る。

なので、今年の予想のテーマは「デインヒルにキツい菊花賞が帰ってくる」ということで。デインヒル内包馬の評価を下げるのを立脚点に予想を始めたい。仮に今年もデインヒル内包馬が好走するようであれば「昨年から潮目が変わった」と整理し、来年の予想に活かせば良いだけなのだ。

各馬の個別検討
アーバンシック
父はスワーヴリチャード、母エッジースタイルはJRAの芝中距離で3勝。祖母がランズエッジなので、ステレンボッシュやレガレイラのいとこにあたり、3代母ウインドインハーヘアはディープインパクトの母という超良血馬だ。

祖母の父ダンスインザダークは菊花賞における注目血統で、これを内包する馬からはデルタブルースやザッツザプレンティをはじめ、2009年にワンツー決着を決めたスリーロールス&フォゲッタブル、そしてみんな大好き「家をたてやま」ファストタテヤマなど、菊花賞の好走馬が多数出ている。

その点でいくと祖母の父がダンスインザダークというアーバンシックの血統表は良さそうなのだが、母父がデインヒル系ハービンジャーというのがなんとも言えず。デインヒルが入る馬を菊花賞で積極的に買えるのか? という疑問にどうしても行きついてしまうわけで。

セントライト記念に出走したデインヒル内包馬がその次走に菊花賞を選んだ場合の成績は、【0-0-1-8】で複勝率11.1%に留まる。ソールオリエンスの1人気3着が最高成績で、ナカヤマフェスタもニシノデイジーもバビットもジェネラーレウーノも本番では凡走。加えて人気以上に好走した馬が極端に少ないのは気かがり。

ハービンジャーとデインヒルの組み合わせからは「強い中距離馬」という感じもあるので、そのあたりをどう見るか。今の段階ではヒモまでかなぁと。

ダノンデサイル
言わずと知れた今年の日本ダービー馬。父は菊花賞とジャパンカップを制したエピファネイア。母トップデサイルはBCジュベナイルフィリーズ2着の成績を残した。

ロベルト4×5、シアトルスルー5×4、サドラーズウェルズ≒ワイルドアプローズ4×4などといった父母相似配合で、GIで活躍した父母の高い競走能力や距離適性を素直に受け継ぎやすい形となっている。

今回は3000mの距離がポイントになるが、ダノンデサイルにとってこの距離は長いと見る。

というのも、これまで3000m級のレースで好走したエピファネイア産駒(アリストテレス、オーソクレース、ディヴァインラヴ、ブローザホーン)は、いずれもエピファネイアが抱えるオリオールを標的にした「ハイペリオン&ドナテッロ」の組み合わせを母から引く共通点があった。反対に母が「ハイペリオン&ドナテッロ」血脈を抱えないエピファネイア産駒は3000m級のレースで好走なし。現状の傾向としては極端だ。

オリオールはキングジョージの勝ち馬で、種牡馬としても凱旋門賞馬セントクレスピンや英セントレジャー勝ち馬を送り出したスタミナ血統。ハイペリオンのスタミナはもちろん、"20世紀最高のステイヤー"アリシドンを世に送り出したドナテッロの血が、距離をこなすうえで良い重しになるのだろう。これらを増幅することで、12Fベストのエピファネイアからスタミナを引き出せると考えたい。

ダノンデサイルの血統表を見ると、母トップデサイルがグロースターク=ヒズマジェスティを3本引くのは良いものの、ハイペリオン&ドナテッロの塊は引いていない。

フラワーボウル≒オリオールで代用がきけば良いのだが、サンプル数は少ないと言えど、同じニアリーオリオールでもフラワーボウルと「ハイペリオン&ドナテッロ」の塊では現状成績に有意差がある以上、同様の効果があるとは言えず。ダービー以来のローテーションでもあり、人気を踏まえて敢えて軽視する手も。

メイショウタバル
父は2012年の菊花賞馬ゴールドシップ、牝系からは京都大賞典を制したメイショウカンパクなどが出る。

そのメイショウカンパクもそうだったが、この牝系は直線平坦巧者、下り坂巧者が多いのが特徴。同牝系のワールドスケールは小倉や福島といったローカルを中心に活躍し、ロンもローカル函館と3角から下り坂の中京でレコードを記録した。そのうえ父はプリンスリーギフト5×5のゴールドシップとくれば、淀の坂下りはメイショウタバルにとって最適の条件に見える。

祖母の父は菊花賞の特注血統ダンスインザダーク。ゴールドシップ×フレンチデピュティの組み合わせからはタバルの他にステイヤーズS2着のプリュムドールが出た配合で、ステイゴールド系種牡馬と母父フレンチデピュティの組み合わせからは天皇賞春を制したレインボーラインも出ている。

フレンチデピュティと聞くと3000mは長いようにも聞こえるが、ステイゴールドとの組み合わせであれば距離をこなして不思議ない。このあたり、デピュティミニスターに薄くではあるがドナテッロが入るため、それがディクタスやメジロマックイーンに入るドナテッロと脈絡するのが良いのかも?

確かにメイショウタバルの牝系はメイショウクリフトのような短距離馬も出るので、タバル自身も京都外の2200mくらいがベストなのかもしれないが、この配合であれば3歳の3000mなら十分にこなせると見る。

逃げてバタバタになった皐月賞のイメージがあるため、暴走気味の逃げ馬と見る向きもあるものの、つばき賞では控えて勝っているし、前走の神戸新聞杯も先頭に立ってからはアタマの位置こそ高かったがしっかり折り合って走れていた。

ノーザンテーストにヴァイスリージェントを合わせるパターンは重馬場やダートなど力の要る馬場への適性をUPさせる仕掛け。毎日杯の大楽勝を見ても馬場が渋るのは歓迎だろう。

その毎日杯が優秀なパフォーマンスだったのも注目に値する。毎日杯を1分46秒5以下の勝ちタイムで制した馬は、ディープスカイ、キズナ、アルアイン、ブラストワンピース、シャフリヤール、そしてメイショウタバルの6頭で、タバルを除く5頭はいずれも後にGIを制しているように打点の高さは保証済み。

調教師になった石橋守が騎手時代に獲り逃した菊花賞のタイトルを当時と同じメイショウ冠の馬で獲りに行くというのも良くできたストーリーだ。その意味でも注目したい。

ヘデントール
父はルーラーシップ、母コルコバードはJRAで5勝を挙げ、札幌芝2600mのOP・丹頂Sでも2着の実績。祖母エンシェントヒルは仁川Sの連覇をはじめ、ダートのオープン特別を4勝した実力馬だった。

ルーラーシップ産駒は菊花賞とそれほど相性が良いわけではないものの、父も母もスタミナのある馬だったうえ、グロースターク7×5でスタミナを強化する仕掛けが施されているのは好感。3000mも問題なく走れるだろう。

3勝クラス勝ちから菊花賞へ臨む馬は数こそ少ないものの、昨年のドゥレッツァをはじめ悪くない成績を残しておりその点でも注目できる。

後はチェルヴィニアと同じく「ルメール専用機」という可能性がある点をどう考えるか。青葉賞ではオシェアがあまりにもあまりにもだったとはいえ、やはり当代一の名手でないと動かせない馬というのは存在する。

初めての関西圏での競馬という点と合わせて不安材料としてはそのあたりくらい。あまり菊花賞のイメージのない鞍上ではあるが、捌きひとつで十分にチャンスのある1頭だ。

シュバルツクーゲル
父はキズナ、母ソベラニアは独オークス2着に加え、イタリアの芝GIリディアテシオ賞3着の実績がある。

ディープインパクト系種牡馬とモンズン持ち繁殖牝馬の組み合わせは、バークレア≒オリオールのニアリークロスが発生するため、距離をこなせる馬が多い傾向にある。このパターンからは、芝2200m以上で4勝を挙げたブラックマジックや松籟S勝ちのゼーゲンなどが出た。

またシュバルツクーゲルの場合は父がキズナ。この組み合わせだと、バークレア≒オリオールに加えて、キャットクイルからアクロポリスを引くため、「ハイペリオン×ドナテッロ」のスタミナを伝える組み合わせをさらに重ねる形に。よりスタミナ色が色濃くなるパターンだ。

ちなみにキズナ×モンズン持ち繁殖牝馬という配合の牡馬は、JRAに4頭が出走し4頭いずれもが2勝以上。3勝クラスのプッシュオンに加えて、ホウオウプロサンゲ、シュバルツクーゲル、ケヴィンはいずれもOPクラスで連対歴がある。打点と打率を両立した組み合わせであることも覚えておきたい。

前走は札幌芝2000mで3勝クラスの特別勝ち。3歳の夏に芝マイル以上の3勝クラスを勝つ馬はのちのち出世する馬が多いのでその点でも注目できるだろう。

キズナにドイツ血統なら馬場が渋っても対応できる配合で、むしろ他馬が気にするようなら相対的に優位に。スタミナ十分の配合なので、菊の舞台で一発の期待をかけたい。

まとめ
まずは淀の坂を上手に下ってくれそうなメイショウタバルに注目。逃げ切りは楽ではないがスタミナのある配合だし、毎日杯のパフォーマンスからもGI級の評価を与えたい。

また混戦になったときはシュバルツクーゲルのスタミナが活きる。こちらに◎を打つことも考えてみたいところだ。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。

<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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