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血統サイエンティスト ドクトル井上

2024/05/27 21:00

【安田記念 2024 血統展望】日本適性の高そうな香港馬2頭 ワンターン&長い直線向きの5歳馬が穴に?

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≪今週の動画≫


皆さま、お元気ですか。“血統サイエンティスト”のドクトル井上です。

日本ダービーは横山典騎手が駆るダノンデサイルが最内から抜け出して勝利。直線の進路取りでロジユニヴァースを思い出したファンも少なくなかったのでは? さすがベテランという騎乗でした。そして皐月賞の除外からしっかり立て直した陣営もお見事。「馬は大事にしていれば応えてくれる」という鞍上のコメントが沁みるレースだったと思います。

◎に据えたシンエンペラーは7番人気ながら3着と頑張ってくれました。隣でゴソゴソしていたゴンバデカーブースにつられて出遅れたのと序盤で行きたがったのを見てさすがにちょっと諦めそうになりましたが、最後の最後に見せてくれた末脚は「◎を打って良かった!」と思わせてくれるもの。

秋は愛チャンピオンSから凱旋門賞というローテーションも発表されました。引き続き注目していきたいと思います。

言わずもがな2着のジャスティンミラノも強かった。4角でベテラン勢の騎乗馬に周りを包囲される形になり戸崎騎手もしんどかったと思いますが、やれるだけのことはやったように思います。

全人馬が無事にゴールしてくれたことに感謝し、気持ちは来年の日本ダービーへ。予想の方も3連複2万馬券&ワイド80倍が刺さって言うことなしでした。

さてこの記事は安田記念について血統面からの展望を。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。

明暗分かれるサンデーとキングマンボ

近10年の成績を見てみると父サンデーサイレンス系が7勝を誇る。かつてはサンデーサイレンス産駒が勝てないGIだった安田記念だがすっかり時代は変わったようだ。エアジハード→ロドリゴデドリアーノ→タニノギムレットのような決着はもう望めないと肝に銘じておこう。

かつては前傾ラップのレースになることが多く、道中の追走力が求められる結果、サンデー系の中距離向きの切れ味が活かし切れないレースが多かったのだが、最近は前半が緩んで追走力を求められないことも多く、その分サンデー系の末脚性能がダイレクトに活きるレースが続いているのだろう。

それもあって近年の安田記念は差せる脚が求められる傾向にある。サンデー系のうち、差し追い込み馬が【7-3-5-56】で複勝率21.1%に対し、逃げ先行馬は【0-0-1-21】で複勝率4.5%に留まり、このパターンで馬券になったのは2015年3着のクラレントだけという厳しい結果になっている。

ということでサンデー系で狙うなら中団以降から差し脚を使える馬を狙うのが手筋になりそうだ。

その一方で、意外なほど振るわないのが父キングマンボ系。この10年で【0-1-1-21】で複勝率は8.7%に留まるうえ、馬券になったのはグリグリの1人気だった19年&20年のアーモンドアイのみ。同馬以外はフタ桁人気の馬が多かったのもあるだろうが、それでもエアスピネル(17年2人気5着)やステルヴィオ(19年5人気8着)など、それなりの人気馬がサッパリ走っていないのは少々気がかり。

通算成績を見ても【1-1-3-30】で勝率2.9%、複勝率14.3%。勝ったのは2013年の1人気ロードカナロアのみ。また母父キングマンボ系も【1-0-1-10】で複勝率16.7%。馬券になったのはインディチャンプだけで、イルーシヴパンサーやソダシなど、人気どころも馬券を外す結果が続いている。

マイラー血脈のキングマンボなのでマイルの舞台でイマイチというのはやや釈然としないものの、マイラーとしてのパワーや頑健さより、サンデーの中距離のキレの方が優位なレースだと考えれば一応の筋は通りそうだ。

各馬の個別検討

ロマンチックウォリアー
すっかり日本のファンにもお馴染みの香港中距離最強馬。2000mであれば世界トップクラスの存在だ。

父のアクラメーションはGI勝ちこそないものの、イギリスで6FのGII勝ちのあるスプリンター。代表産駒にも短距離馬が多く、ミドルパークS勝ちのダークエンジェルや5FのGIをふたつ制したマーシャなどが挙げられる。

母のフォークメロディは現役時代はゴドルフィンの所有馬として英国C.アップルビーのもと走って5戦1勝。祖母フォークオペラはカナダの芝10FのGI・E.PテイラーSやフランスの10FのGII・ジャンロマネ賞などを勝っている。短距離志向の強いアクラメーションの産駒ながらロマンチックウォリアーの成績が中距離に寄っているのは、この母系の影響が強いのだろう。

地元に右回りコースしかないため香港馬は左回りが懸念されることが多いものの、ロマンチックウォリアーは左回りのムーニーバレーでコックスプレートを勝っているのでそこも問題なし。

また安田記念はマキャヴェリアンの血と相性が良いのもポイントで、過去の同レースでマキャヴェリアンを内包する馬は【3-1-0-4】で勝率37.5%、複勝率50.0%の好成績。好走したのはリピーターのアサクサデンエンとソングラインだけとはいえ、単純な成績であれば十分に評価に値する数字だ。

ロマンチックウォリアーも、母フォークメロディがシングスピール×マキャヴェリアンという配合でヘイローの4×4を内包。

欧州スプリンターのアクラメーションが安田記念を勝つのか? と聞かれるとちょっと自信をなくしてしまいそうになるが、母の配合はアサクサデンエンをひっくり返したような形になっており、この母の適性を受け継いでいるようなら問題なくこなせてしまうだろう。

海外遠征と久々のマイルという割り引き材料がある一方で、そもそもの実力は折り紙付き。マイルの距離でもゴールデンシックスティとそう差のない競馬をした実績がある。アッサリ強さを見せつける可能性も十分にありそうだ。

ヴォイッジバブル
父のディープフィールドは豪州で1200mのGII勝ち。短距離のGIライトニングSでも3着に入った快速馬だった。代表産駒はヴォイッジバブルの他、2021年の香港スプリントを制したスカイフィールドや南アフリカのマイルGI・キングズプレートを制したアルムタナといったあたり。基本的には父に似た短距離からマイル向きの産駒が多い。

母ラヘイツからはヴォイッジバブルの他にオーストラリアで1200mのGIIIを勝っディダムスなどが出る。豪州牝系ということもあって牝系からはこちらも短距離馬が中心に輩出されている。ヴォイッジバブルも香港ゴールドカップ2着など中距離での実績もあるものの、ベストディスタンスはやはり短距離からマイルの感がある。

個人的には父父のノーザンミーティアの配合が結構好きで、スペシャル=スカフの同血クロスがなんともオシャレ。加えて豪州血統らしくヘイロー≒サーアイヴァー≒レッドゴッドを重ねる形になっているので、機動力のあるマイラーという印象を受ける。

日本の芝にも全く問題なく対応できるタイプと見ているが、東京はやや直線が長いのかも。最後何かに差されるイメージもあって、果たしてそれが2着なのか3着なのか4着なのか5着なのかという感じ。無論、力はあるので印は回しておきたい。

ガイアフォース
キタサンブラック産駒だが、この馬は母父クロフネのフィジカルも前面に出ている印象。言葉は悪いかもしれないが、北米血統のいい意味でのガサツさが感じられる。ハイペースでガンガンやりあって、誰が一番最後まで立っていられるか決めたらええねん! みたいな。

チャレンジCを見ていても分かるように、トビが大きくコーナリングは苦手でコーナーの回数は少ないほど良いタイプ。またペースの上げ下げも苦手なので一貫したペースで引っ張ってもらう方が走りやすい。

反対に一貫した流れであればペースが速くても我慢できるのは、前半1000mが57秒7というトンデモラップで逃げたジャックドールをビタマークして5着に粘った昨年の天皇賞・秋を見てもおわかりいただけるはずだ。

上がり性能がないという言われ方をされることも多いが、ギアの切り替えに時間がかかるタイプ(≒だからコーナーで細かくギアチェンジする競馬は苦手)なだけであって、長い直線で助走区間を長く取れるコースであれば、キチンと上がりの脚を使うことは可能という認識。

実際に去年のマイラーズCではシュネルマイスターに次ぐ上がり2位、安田記念では4着という結果でしたが、シュネルマイスター、ソングラインに次ぐ上がり3位の脚を使っている。

昨年の安田記念でキチンと上がりの脚を使って掲示板に載ったというのも推したいポイントで、東京競馬場がリニューアルされた2003年以降、前年の安田記念で上がり3位以内の脚を使って掲示板に載った馬が翌年の安田記念に参戦した場合の成績は【4-3-2-12】で勝率19.0%、複勝率42.9%をマーク。単勝回収率130%、複勝回収率112%で配当妙味もついてくる。

とにかくワンターンで直線の長いコースで狙えばいい馬だと思っているので、ここは間違いなく狙い時だろう。芝ダ問わずマイルでは差す競馬を試みているのも「差せるサンデーが強い」というレース傾向にマッチしているし、人気の盲点になりそうなのもありがたいかぎりだ。

ソウルラッシュ
ルーラーシップ×マンハッタンカフェという一見すると中距離馬のような配合ながら、マイルの距離で結果を残しているのは祖母の父ストームキャットのお陰だろう。

ただどこまでいってもルーラーシップ×マンハッタンカフェであるという事実もついて回り、それがマイルでの末脚性能不足に表れているようにも見える。中団から運んで上がり3F33秒5で間に合うレースになれば足りるのだろうが、近年の安田記念は中団から運んで勝ち負けに絡もうと思うと、上がり33秒台前半の脚が求められる。

ちょっくら上がりの性能が足りない気がする、というがファーストインプレッション。

そのうえ相性の悪い父キングマンボ系。ロードカナロアがようやく勝って、アーモンドアイが2年連続で往復ビンタをくらうレースで、ルーラーシップを買えるかと言われればちょっと苦しい気も。

しかしながら今週の東京は雨予報なのは追い風になりそう。馬場が渋ったままならワンチャンスという感じだろうか。

セリフォス
「ダイワメジャー産駒は先行してこそ」がモットーではあるものの、この馬についてはもう差し馬ということで諦めつつある。前走のマイラーズCであの形から差して2着なのは、マイルの距離では本質的には差し馬なのだろう。

ただダイワメジャーが末脚性能で勝負するというのは、やはり幾ばくかの矛盾を感じざるを得ないというのが正直なところ。

勝ったマイルCSは斤量差でその矛盾を誤魔化したが、斤量を普通に背負うようになった4歳以降に勝利がないのはそのあたりが影響しているように思えてしまう。

1800mあたりで先行させたら強いんじゃないのかなぁ…と思っているのだが、その距離にビッグレースがないのは如何ともしがたい。個人的には押さえまでというイメージ。

パラレルヴィジョン
下級条件では切れる脚を使って勝っていたのだが、出世するにつれて溜めても切れる脚を使えなくなる格好に。そのためダートを試したりして、結局は芝のマイルがベストという形に落ち着いた。キズナにサドラーとダンジグを合わせるのはバスラットレオンと同じパターンで、マイルベストに落ち着いたのも確かに納得できるところだ。

そのバスラットレオンと同じく切れる脚には欠けるので前々から押し切りたいところではあるが、いかんせん差しが強いのが近年の安田記念。先行したサンデーで馬券になったのはほぼいないというのはどうにも引っかかるところ。

前走のダービー卿CTから大幅に相手が強くなることもあって、いくらルメール騎手騎乗と言えどちょっと手は出しづらい印象を受ける。しかも鞍上のネームバリューで人気するんでしょう……? なおのこと買いづらさが。

ナミュール
前走は出遅れて弾けることのない消化不良の内容。帰国初戦だったのも影響したか。とはいえ昨年もヴィクトリアマイル→安田記念と連敗しており、湿度の高いこの時期の競馬が合っていない可能性も。ハービンジャーのデインヒル系は近10年で【0-0-0-9】なのでその点もちょっと気になる材料。

というより改修後の東京コースの安田記念において好走したのは、ダンジグ系という広い括りで見てもシュネルマイスターだけなのであまり相性は良くないのでは? という印象も。

もちろん力があるのは百も承知なので、人気とのバランスを見ながら取り扱いを考えたい。

ステラヴェローチェ
バゴ×ディープでハイトオブファッション≒バークレアの3×4をまとっているが、根っこの部分は近親のゴスホークケン的な軽いスピードの要素が隠し切れていないと思っており、古馬の大舞台で好走するならマイルのGIとか今年の大阪杯のような相手のレベルがちょっとピンとこない中距離レースなのでは? という気も。

前走は伸びない外から1頭だけ追い込んできたので内容としては良かった。ここも印は回しておきたい。

まとめ

血統面を見るかぎり、香港馬2頭は日本の馬場への適性はありそう。実力もあるので遠征の不利さえ跳ね返せるようなら十分にチャンス。個人的には母がアサクサデンエン似のロマンチックウォリアーの地力に惹かれるものがある。

また穴っぽいところではガイアフォースに注目したい。マイル戦では常に差す競馬を選んでいるのも安田記念のレース質を考えれば好感だし、ワンターンで直線の長いコースはこの馬にとってうってつけの舞台のはずだ。クロフネ譲りのフィジカルが火を噴くか。

枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
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<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上

在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。
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