競馬サロン

2024/06/17 21:00
【宝塚記念2024 血統展望】まさに僥倖! 京都外回りで逆襲を期す注目の存在とは!?


≪今週の動画≫
皆さま、お元気ですか。“血統サイエンティスト”のドクトル井上です。
マーメイドSは外連味のない逃げを披露したアリスヴェリテが勝利。鞍上の永島騎手にとっても初の重賞タイトルとなりました。素直におめでとうございます。
◎にしたエーデルブルーメは2着。外々を回してあの内容なら十分でしょう。力は出し切ってくれたと思います。予想の方は「ハービンジャーは2着が多い」という点から馬単2着付けという勝負手を放ったところ、それがキレイにハマってくれました。
さてさてこの記事では宝塚記念(GI・京都芝2200m)の血統展望をば。ごゆるりとお付き合いいただけますと幸いです。
■京都芝2200mの血統傾向について
先週のマーメイドSに引き続き宝塚記念も、いつもの阪神ではなく京都競馬場が舞台となる。そのため、ここでは京都コース改修後の京都芝2200mの傾向をチェックしていこう。
(1)ディープ系は父の京都芝重賞実績で仕分ける
京都外回りといえばディープインパクト系というイメージが強い方も多いはず。実際に昨年の改修後もその傾向はさして変わっておらず、改修後のこのコースでディープ系種牡馬の産駒は複勝率30%超となかなかの成績を収めている、
そこからもう一歩踏み込むのであれば、父の京都芝重賞での成績に注目したいところ。
▼新京都芝2200mにおけるディープ系種牡馬の成績
父が京都芝重賞勝ち【9-6-3-24】
勝率21.4% 連対率35.7% 複勝率42.9%
(例:キズナ、サトノダイヤモンド、ディープインパクト、トーセンラーなど)
父が京都芝重賞未勝利【1-1-4-25】
勝率3.1% 連対率6.5% 複勝率19.4%
(例:リアルスティール、アルアインなど)
このように同じディープ系であっても、父が京都芝重賞を勝っていた場合の方が明らかに成績が良い。
【5-4-2-11】のキズナが成績をブチ上げている側面も否定しないが、ディープインパクト産駒やサトノダイヤモンド産駒が活躍しているのもまた事実。京都の芝重賞は基本的に外回りが舞台になるので、3角過ぎの下り坂からしっかり脚を使えるような適性を父から受け継いだ馬が強いと言えそうだ。
(2)キングマンボ系はやや不振?
改修後の当コースにおける父キングマンボ系の成績は勝率6%弱、複勝率は20%を切る格好になっている。
エリザベス女王杯をロードカナロア産駒のブレイディヴェーグが制しており、一概に苦手と断定することはできないが、改修前の成績が勝率10.8%、複勝率28.6%、単勝回収率115%、複勝回収率97%だったので、それと比較するとやや期待度は低くなっている印象だ。
改修により路盤が重くなってスタミナが要求されるようになったのが、若干とはいえ影響を与えているのかもしれない。
■各馬の個別検討
▼ドウデュース
栄えあるファン投票1位がこのドウデュース。昨年の有馬記念はとにかく強かった。ただ個人的には未だにこの馬の全容を掴めていなかったりする……。
スワーヴリチャード的なハーツクライとシアトルスルーの組み合わせなので、大箱のダービーを勝ったのは納得なのだが、走りを見てみるとトンデモないくらいのピッチの利き方。そして小回りのコーナーで尋常ならざる加速をする。
ハーツクライ的でもないし、シアトルスルー的でもない。血統表上の何が表現されているのかという話を考えるとキリがないが、ひとつヒントになりそうなのはリファールのクロスだろうか。
母がリファールを持つハーツクライ産駒(=リファールクロスのあるハーツクライ産駒)の賞金上位を見てみると、リスグラシュー、ドウデュース、タイムフライヤー、ダノンベルーガ、ツルマルレオン、ポンデザールなどといったあたり。現役だとボーンディスウェイなどが入ってくる。ダノンベルーガは別として、意外と小回りをこなせる面々が多い印象だ。
リファールにはレディジュラー由来の機動力と小脚を伝えるフェアトライアルが入るため、この要素が強化されることで小回りをこなせる馬が出るという仮説は成り立ちそう。実際に古馬になってからドウデュースが勝った2戦はいずれも内回りコースであり、本質的なベストはここにあるのではなかろうか。
だとすれば京都外回りでの開催はあまり歓迎できないのでは? もう少し短い距離ならピッチで加速しそのままゴールへ雪崩れ込むような競馬もできただろうが、大箱の2200mだとラストで何かに差される危険性が無きにしも非ず。
グラスワンダーとスペシャルウィークで決まった1999年を筆頭に、阪神2200mの宝塚記念ではより脚を速く回せる馬が勝ってきたわけだが、京都外回りの今年はちょっと違う結果になるのでは? そんなことを思うわけなのだ。
実力には最上位の評価を与えつつ、印的にはあって対抗まで。◎は別の馬に打ちたいというのが現段階での感触だ。
▼ジャスティンパレス
母パレスルーマーは名繁殖牝馬でジャスティンパレスの他、ベルモントSなどを制したパレスマリスやステイヤーズSを制したアイアンバローズを送り出した。スタミナ豊富な産駒を送り出すのが特徴で、母に入るロベルトやエルバジェのスタミナを良く伝えるのだと考えられる。
ディープ産駒ながらスパッと切れる感じはなく、どちらかと言えばノシノシ感のあるタフな末脚が持ち味という感じ。ルメール騎手も1週前追い切りのあと「瞬発力がないのでラスト500メートルでポジションを上げたほうがいい」というコメントを出していたように、一瞬の加速力というより長い直線で惰性で勢いに乗って最後まで脚を使うような競馬の方がベターだろう。
なので小回りでのギアチェンジ勝負より長い直線での末脚比べの方が得意。今年の宝塚記念が京都の外回りなのは間違いなくプラスになる。
確かに大箱だった前走・ドバイSCでは4着とビミョーな内容に終わったが、レースラップを見るとさもありなん。ドスローからのギアチェンジ勝負になったのが敗因だ。
映像をもとにザックリと区間ラップを採ってみたところ、ラスト2F目が極端に速く、11秒を切るかどうかのところまで加速する形になっていた。そこでギアチェンジにモタついた分、前との差が広がって差し届かずという内容だった。
これは映像でリバティアイランドと比較するとより分かりやすい。ジャスティンパレスはラスト200mでリバティアイランドに交わされそこから1馬身以上前に出られたのだが、そこからは差が広がらず、むしろゴール手前ではリバティアイランドとの差を詰めて、ゴール過ぎてからもう1度交わしていた。
この「スパッとは切れないけど息の長い末脚」というのはディープというより、母父のロイヤルアンセムに由来するヌレイエフ的な末脚という感じがする。古い例えで恐縮だがフラガラッハとかハクサンルドルフ的なタフな馬場で映える斬れというイメージだ。
梅雨時で上がりのかかる馬場、そして京都とは言え路盤がまだ固まり切っていない状況というのもヌレイエフ的な末脚とイメージピッタリ。
タフな末脚ということで直線に急坂のある阪神外回りでさらに良さが出るのかもしれないが、少なくとも大箱に替わりさえすれば、有馬記念でドウデュースにつけられた1馬身半ちょっとの差は十分に逆転可能と見る。
▼ブローザホーン
初めてのG1挑戦だった天皇賞・春で2着に好走した同馬。ハビタットを引くエピファネイア産駒とあって直線平坦コースは大の得意。この馬も京都での代替開催は歓迎のクチだろう。実際に京都コースで馬券を外したのは、心房細動で競走を中止した京都大賞典だけだ。
キャンペンガールの持つオリオールにサワヤカプリンセスからアリシドンを合わせたスタミナ強化パターンで、距離はもう少しあっても良さそうに見えるが、とはいえタフな梅雨時のレースであれば十分に対応できるはず。
前走は先行馬が1着、3着、イン差し馬が4着、5着にくる徹底的なイン有利の状況のなか、直線では唯一外から脚を伸ばした。勝ったテーオーロイヤルとは決定的な差があったとはいえ、この馬自身もロスを考えれば十分に強い競馬だった。
前走でも◎を打ったように、京都が舞台である以上、当然ここでも重い印を回したい1頭だ。
▼ベラジオオペラ
父はロードカナロア、母のエアルーティーンはJRAで5戦1勝。祖母のエアマグダラは秋華賞勝ち馬のエアメサイアの全妹で、牝祖アイドリームドアドリームからは二冠馬エアシャカールなどが出た、エア冠の吉原オーナー所縁のファミリーだ。
アイドリームドアドリーム牝系の特徴は内回り・小回りの機動力勝負で強さを発揮する点。ボールドルーラー由来の小脚をしっかり伝える牝系で、内回り中距離の重賞では絶対に印を回しておきたい存在だ。
その点で言うと、前走の大阪杯はまさにアイドリームドアドリームという感じ。操縦性の良さと小脚性能で内回り2000mを勝ち切るという「らしさ満点」の勝ちっぷりだった。
となると京都外回りに替わるのはどうなんだろうか? という疑問がふつふつと。この馬に関して言えば例年どおりの内回り阪神芝2200mでの開催の方が良かったように思う。
実際に2月の京都記念では1キロ重い斤量を背負ったプラダリアに完敗。内回りで機動力を活かす競馬の方がやはり良さそう。
加えてGI昇格後の大阪杯勝ち馬が同年の宝塚記念に出走した際の成績は【0-0-1-4】で複勝率20.0%。軽い大阪杯の馬場コンディションと梅雨でパワーが要る6月の馬場コンディションは似て非なるもの。距離が200m違うだけの例年ですらこれなのに、外回りになって京都になる今年はさらにリンクしづらいのでは? と思えてしまう。
▼ローシャムパーク
ハービンジャー×キンカメはモズカッチャンやブラストワンピースが出た必殺の配合パターンで打点の高さは折り紙付き。また晩成傾向の強いエアグルーヴ牝系なので、5歳の今がまさにピークだろう。
前走の大阪杯は道中で動いた戸崎騎手のファインプレーであり、小回り適性で連対したというレースではなかった。血統的にも広いコース向きだろうから、阪神内回り2000mから京都外回り2200mに舞台が替わるのはプラスになるだろう。
あとは極端に馬場が悪化しなければ……、といったところ。重馬場だったスピカSで前に進まず負けてしまったので、滑る馬場はあまり良くないはず。とはいえ上がりがかかる状況自体は歓迎なので適度にパワーの要る馬場ならというイメージで考えている。
▼ソールオリエンス
「本質的には大箱向きなのでは?」という印象を受ける同馬。確かに中山の2000mで京成杯と皐月賞を勝っているが、いずれも外をブン回しての勝利であり、コーナリング性能、小脚で勝ったレースではない。
ここ数戦は連に絡めず精彩を欠いているが、古馬相手だった3戦はいずれも内回りコースが舞台だった。それを思えば情状酌量の余地はあるだろう。
さらに血統表を見てみると、サクラバクシンオーと牝系からプリンスリーギフトを引いており、6×7のクロスが発生する格好に。これは京都替わりを考えるうえで間違いなくプラスになる。
ステイゴールドから菊花賞馬がぽこじゃか出たのも、サッカーボーイから京都芝重賞勝ち馬がバカスカ出たのも、ひとえにプリンスリーギフトが上手に京都の下り坂を下れる血だから(+ディクタスのスタミナ)。
外を回す競馬しかできないためそれがハマる馬場になるかどうかが鍵を握るものの、梅雨時かつロングラン開催の最終週という条件ならそこもクリアできると見る。
4歳世代=弱いというイメージが定着しつつあるのでまず間違いなく人気を落とすはず。しかしながら、近走は適性外の条件を走っていただけだと考えれば、もう1回だけ買うチャンスはあるだろう。
一発大駆け(皐月賞馬をとっ捕まえて何を言っているんだという感じもあるが……)に期待したい。
▼ディープボンド
京都得意のモガミヒメ牝系出身かつキズナの産駒で、京都外回りへの適性はメンバー屈指。天皇賞・春の予想の際にも指摘したとおり、高速上がりだと厳しいが上がり1000mが59秒以上かかれば食い込む余地がある。
その天皇賞はあまりにも幸さんの騎乗が完璧だったので、あれ以上となるとなかなか苦しいかもしれないが、オッズを考えるとここでも印は回しておきたい。
▼プラダリア
京都芝重賞2勝の当地巧者。インのハコに収納されて完璧な立ち回りに見えた前走・大阪杯で、ラスト伸び切れなかったあたり、急坂はどうしても苦手なようだ。いやぁ、やれると思ったんだけど……(←◎だった人)。
時計のかかる京都に替わるのはプラスだが、振り返ると夏があまり良くないタイプでもあり気温の高かったここ最近の天候はビミョーかも。
加えて叩いて良化するタイプなので、約3カ月ぶりの実戦というのもやや割り引き。今のところあって押さえまでという感じか。
■まとめ
京都外回りでの代替開催が良い方に出そうなジャスティンパレスが最注目の存在。展開不向きだった前走・ドバイSCでリバティアイランドと差のない4着にまとめた脚力は当然評価に値する。
一発の期待を込めるならソールオリエンス。大箱替わり&京都替わりでパフォーマンスを上げる可能性に期待したい。
枠と週末の馬場コンディションを見つつ、最終結論は土曜日の夜に公開いたしますので、そちらもどうぞお楽しみに。
<プロフィール>
“血統サイエンティスト”ドクトル井上
在野の血統研究家。旧知のオーナーを中心として、セリや配合のコンサルティング業務を請負中。
好きな種牡馬はダノンレジェンドとハービンジャー。苦手な種牡馬はMore Than Ready。
凱旋門賞馬Ace Impactの血統表は芸術品なので、ルーヴル美術館に収蔵されるべきとわりと本気で考える三十路の牡馬。

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