弥生賞はダノンプレミアムが無傷の4連勝で皐月賞に王手。

先行抜け出しのスタイルはディープインパクト産駒のイメージを覆すもの。現時点で比べるのは酷かもしれないが“凡走の匂いを感じない”意味ではエルコンドルパサーを彷彿とさせる。異常なハイペースにでもならない限り、クラシック一冠目のタイトルはほぼ手中に収めたようなものだろう。

さて、私にはレース前から注目していたことがある。

それは「レース後のコメント」。

トライアルレースは、陣営は騎手が本番に向けて課題を確認する場でもある。大手馬主や牧場が強大な力を有する昨今の競馬界は敗戦という事実のみを直視する傾向が見受けられるが、そのような考え方はハッキリと反対だ。課題の確認と発見、そして修正……この一連の流れはひとりの騎手に任せるべきだろう。

弥生賞のレース後にどんなコメントを発したのか？

ここでは2.3着馬の騎手にスポットを当ててコメントをご覧いただきたい。

2着　ワグネリアン（福永騎手）
「レースに関しては言うことは何もありません。スタートも出ましたし、3戦の中で一番リラックスして走っていました。最後、負けてしまったのは、休み明けと気負っていたのと相手も強かったことがあったと思います。次に向けて良い経験になりました」

3着　ジャンダルム（武豊騎手）
「前走より雰囲気と走りが良くなっていました。いいレースが出来ましたが、相手が強すぎました。多頭数になる本番では何とか逆転したいです」
（ラジオnikkeiより抜粋）

こうしてみると、コメントの裏に隠されたテーマが明確に浮かび上がってくる。

まずワグネリアン。

「一番リラックスして……」の言葉から、道中の折り合いに気を遣っていたことが見て取れる。中京でデビューし、2歳秋に東京競馬場を経験したように同馬の目標はあくまで日本ダービー。東京芝2400mで末脚を爆発させるためには道中の折り合いが鍵。その課題をクリアしたことは大きな収穫だったと言えるのではないだろうか。

ジャンダルムについては、別のコメントも参照したい。

「（相手が）強すぎる。普通ならこの馬もトップレベルだと思うんだけど」

思い出すのは2年前。弥生賞に参戦した武豊とエアスピネルのコンビは3着という結果に終わった。当時のレース後コメントは以下の通り。

「不思議な感覚です。いいレースができて、馬自身は最後までしっかり走っています。普通なら勝てるレベルの内容で3着でした。今年の馬たちは強いです。本番は巻き返したいです」

ここで重要なのは、どのような戦法をもって巻き返しを図るか？　その1点に尽きる。
距離不安も囁かれたホープフルSは1コーナーを10番手で通過したように、末脚を温存する競馬。展開も味方したことで2着と一定の成果が得られたものの、裏を返せば展開次第で変わっていた着順とも捉えられる。

ならば……とばかりに今回は先行策を選択した。

ワグネリアンより前のポジションを取り、3-4コーナーでは促してダノンプレミアムを射程圏内に。結果、ダノンプレミアムには突き放されワグネリアンの差し脚に屈した。レースを見た印象を踏まえると、常識的に考えてこの2頭を逆転することは難しいだろう。

だからこそ、以下のコメントに一縷（いちる）の望みを託したい気持ちが私の中に芽生えている。

「多頭数になる本番では何とか逆転したいです」

中山芝2000mのホープフルSで経験した17頭立て。皐月賞は多頭数が予想されるうえ、聞き覚えのあるGIのファンファーレとともにレースに臨む。キャリアが少ない3歳馬において、ジャンダルムの経験値によるアドバンテージは計り知れない。

スプリングSで始動する朝日杯FS2着馬ステルヴィオに若葉Sで始動するGI馬タイムフライヤー。これに無敗できさらぎ賞を制したサトノフェイバーが加わることで3歳牡馬クラシック戦線のピラミッドは完成することだろう。むろん、皐月賞トライアルのなかから新星が登場する可能性もある。

前哨戦を読み解くうえで、ぜひ注目していただきたいのはレース後のコメント。その言葉から陣営の意図を推理し、本番へとつなげる……競馬は短期的ではなく、長期的なスパンで見るものなのだ。

今週のフィリーズRではレース後にどんなコメントが発せられるのか……レースとは別のベクトルで楽しみにしたい。

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