観測史上最高の暑さの中で、熱い闘いが繰り広げられた夏競馬もついに閉幕。今週から、秋競馬が開幕します。

そのオープニングを飾る紫苑Sは、今年からGIIに昇格。レースに対してこういった表現をするのは間違っているかと思いますが、重賞昇格からわずか7年でGIIに昇格というのは、異例の出世スピードといえるでしょう（重賞昇格直後から、なんとなくGI昇格も既定路線だったような気がするホープフルSを除いては）。

もちろん、昇格の背景にあるのは、紫苑Sで好走した馬がその後も活躍したから。オープンでおこなわれていた時代は、秋華賞になかなか結びつかないレースだっただけに、その時のことを思うと隔世の感があります。

ということで、早速、紫苑Sの予想に移りたいところですが、まずは先週の振り返りを。久々に3レースおこなわれた重賞の中で、小倉2歳Sを取り上げます。

勝ったのはアスクワンタイム。大外から豪快に追込み、ミルテンベルクとの叩き合いを制しました。

このレースを振り返る上でポイントとなり、勝負を分けたのは、馬場の内外の有利不利。いわゆる、トラックバイアスでしょう。

近年の小倉2歳Sは、4週間＝8日間開催の最終日におこなわれており、今年も明らかな外差し馬場。この日は、芝1200ｍ戦が4レースおこなわれ、小倉2歳Sを含めた午後以降の3レースは、いずれも大外枠の差し、追込み馬が勝利。2、3着も外枠の馬が占めました。

また、これら3レースは小倉の芝1200ｍ戦らしく前半の流れが速かったこともあり、後方に位置していた馬にとって展開面の恩恵があったのは確か。さらに2歳Sに関していえば、出走10頭と手頃な頭数。馬群を捌きやすかったことも味方しました。

そんな中、後方一気を決めた1着アスクワンタイムと2着ミルテンベルクも、やはり8枠からスタートした馬。枠と展開に恵まれた部分は確かにありましたが、ともに母父はディープインパクト。父は、それぞれロードカナロアとモーリスです。

中でも、勝ったアスクワンタイムは、全兄ファンタジストに続く小倉2歳S制覇で、10日のセントウルSに出走予定の全姉ボンボヤージも、同じく小倉芝1200ｍでおこなわれた昨年の北九州記念を勝利。3きょうだいが同一コースで重賞制覇というのは非常に珍しく、ひょっとすると前例のない記録かもしれません（3きょうだいが、異なるコースでの同一重賞制覇はあり）。

また、母ディープインアスクの産駒で、これまでデビューしたのは7頭。そのうち、前述した3頭を含む6頭は、梅田智之調教師の管理馬です。この血統の特徴を知っているのは大きな強みで、アスクワンタイムはもちろん、ボンボヤージにもこの一族の悲願といえるGI制覇を期待したいと思います。

そして、枠順傾向に話を戻すと、小倉2歳Sが明らかに外枠有利となったのは、8日間開催となった2020年から（2019年までは6週＝12日間の開催）。来年のスケジュールはまだ発表されていないものの、近年と同じく当レースが8日間開催の最終日におこなわれるようであれば、8枠に入った馬を最有力候補としたほうが良いかもしれません。

それでは予想に。

今回は、3着までに秋華賞の優先出走権が与えられる紫苑Sを深掘り調査。過去5年の好走傾向から重視できそうな指標を探し出し、本命馬を見つけます。

（1）前走頭数
（2）前走レース
（3）今回の枠順
（4）母父の系統
（5）前走上がり
（6）東西別
（7）前走着順
（8）前走の枠順

近年の傾向から重視できそうな指標は、上記8項目。その中で、（1）は前走の頭数です。
前走、多頭数のレースで揉まれた馬の好走率が高い紫苑S。具体的には、前走16頭立て以上のレースに出走し、4コーナーで7番手以内に位置。なおかつ、キャリア7戦以下の馬は［2-2-4-8/16］。勝率12.5％、複勝率50.0％。単勝回収率86％、複勝回収率140％。該当馬の半数が好走していました。

（2）は、前走レースです。
紫苑Sは、前走オークス組が強さを発揮するレース。前走オークスで13番人気以内だった馬は［3-3-3-6/15］。勝率20.0％、複勝率60.0％。単勝回収率112％、複勝回収率136％。該当馬の半数以上が好走していました。

次は（3）。今回の枠順です。
秋競馬の開幕日におこなわれる紫苑S。内枠有利の印象がありますが、実際には外枠優勢で、とりわけ8枠に入った馬は［2-2-2-6/12］。勝率16.7％、複勝率50.0％。単勝回収率60％、複勝回収率122％。かなりの好成績でした。

（4）は、母父の系統。
近年の当レースは、ニアークティック系種牡馬、もしくはナスルーラ系種牡馬を母の父に持つ馬が健闘しています。その中でも、前走重賞に出走した馬は［3-3-2-3/11］。勝率27.3％、複勝率72.7％。単勝回収率104％、複勝回収率140％。好走率7割超えの、驚異的な成績を収めています。

折り返しの（5）は、前走上がりについて。
4で割り切れる根幹距離のレースとはいえ、小回りかつ直線が短い中山芝2000ｍは、主要なコースとはやや外れた条件。前走、キレ負けしたくらいがちょうど良く、前走上がり4、5位の馬が［2-2-1-5/10］。勝率20.0％、複勝率50.0％。単勝回収率73％、複勝回収率120％。（1）（3）と同じく、該当馬の半数が好走しています。

続いて、（6）は東西別成績。
出走頭数は少ないものの、好走率では関西馬が関東馬を上回っている紫苑S。その中でも、前走左回りのレースに出走した馬は［1-2-2-3/8］。複勝率62.5％。複勝回収率191％。文句なしの好成績で、今年該当するのはダルエスサラームだけです。

（7）は、前走着順について。
（2）とやや重なりますが、前走、二桁着順に敗れた馬が巻き返す紫苑S。具体的には、前走10着以下。かつ、今回偶数番を引いた馬が［1-1-2-4/8］。勝率12.5％、複勝率50.0％。単勝回収率120％、複勝回収率141％。これまた、文句なしの成績でした。

そして、最後は（8）。前走の枠順です。
どういうわけか、近年の紫苑Sは前走7枠を引いた馬の健闘が目立ち、中でも、前走3コーナーで7番手以下に位置していた馬は［1-2-1-3/7］。勝率14.3％、複勝率57.1％。単勝回収率64％、複勝回収率194％。該当馬の半数以上が好走。

一方、前走1、2枠に入った馬もまずまず。こちらも「どういうわけか」になってしまいますが、この中でも毛色が鹿毛だと［1-2-1-5/9］。勝率11.1％、複勝率44.4％。単勝回収率31％、複勝回収率136％。まずまずの成績でした。

これら8つの指標を踏まえ、印と買い目を下記のとおりとします。

◎15　エミュー
○2　 モリアーナ
▲6　 フィールザオーラ
☆17　ダルエスサラーム
△8　 ニシノコウフク
△3　 ヒップホップソウル
△14　グランベルナデット
△10　ソレイユヴィータ
△16　アップトゥミー　
△1　 ミタマ

【買い目】

・単勝　15
・馬単マルチ　15＝1、2、3、6、8、10、14、16、17　計18点
・ワイド　15→1、2、3、6、8、10、14、16、17　計9点
・3連複軸1頭ながし　15→2、6、8、17　計6点

本命は、単独3項目に該当したエミュー。以下、2項目該当の4頭に印をつけましたが、馬券上の扱いは同じです。

春二冠、ともに二桁着順と敗れてしまったエミューは、出走17頭中、唯一の重賞ウイナー。中山芝2000ｍは初めてのレースとなりますが、重賞を制したフラワーCを含め、この競馬場で全3勝をあげています。

唯一の重賞ウイナーということは、言い換えれば、ライバルの多くは夏の上がり馬。条件戦を勝ち上がってきた勢いのある馬ということになりますが、レース傾向からしても、オークスに出走した実績を重視したいところ。中山の中距離重賞を得意にしているM.デムーロ騎手が継続騎乗する点も心強い限りです。

また、父ハービンジャー×母父スペシャルウィークの組み合わせは、2017年の当レースと秋華賞を連勝したディアドラと同じ。血統面での後押しもありそうです。
さらに、開幕週特有のパンパンの良馬場でおこなわれることが考えにくい中で、不良馬場のフラワーCを勝った経験はアドバンテージになるはず。二桁着順と崩れてしまった春二冠の巻き返しを期待します。

馬券は、エミューの単勝と同馬からの馬単マルチ、ワイドを購入。単勝に関しては、10倍を切るようであれば買いません。
また、2項目に該当した4頭への3連複軸1頭ながしを購入。モリアーナ以外の3頭は人気にならないはずで、これらの馬が上位に来れば、大きな配当が見込めそうです。

それでは土曜日も競馬を楽しみましょう。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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